これは復讐と赦しの物語だ - 「ブラザーベア」

今回紹介するのは"ブラザーベア"!

聞いたことあります?私も存在は知っていましたが、舐めてました。ごめんなさい🙇

ディズニー作品で動物が出てくるとなると・・・、ほのぼのファンタジーでしょ?

いやいや、思い切り裏切られました。もちろん良い意味で。

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あらすじ

はるか昔、マンモスが存在し、自然をつかさどる精霊であるグレイト・スピリットの力が信じられていた時代。狩猟民族イヌイットの三兄弟がいた。長兄のシトゥカ・次兄のデナヒ・末弟のキナイ。キナイは成人の日、村のシャーマン・タナナから人生の道しるべとなるトーテムを授かるが、それは「愛」を象徴する熊であった。しかし彼はそれが気に入らず、やたらと大人ぶるようになる。そんな中、熊に襲われてしまい、シトゥカが彼とデナヒを守り、犠牲になってしまう。悲しみと怒りに燃えるキナイはその熊を追い詰め手にかけた。その直後、グレイト・スピリットの一部となったシトゥカが彼を熊に変えてしまう。タナナは驚くばかりのキナイに、やるべきことと行くべき場所を教えて去る。そこに、母親を探している子熊・コーダが加わり、二匹は共に旅をすることとなる。


これみてポイント

ハイクオリティな作画と背景美術

本作の特筆すべきポイントはなんといっても画面の美しさ。

公開は2003年。当時のウォルトディズニーアニメーションスタジオは2Dから3Dへ徐々に移り変わろうとしていた時期でもあります。

この頃の代表作を並べるとこんな感じ。

リロ・アンド・スティッチ (2003年3月8日)(2D)

トレジャー・プラネット (2003年7月12日)(2D)

ブラザー・ベア (2004年3月13日)(2D)

チキン・リトル (2005年12月23日)(3D)

ボルト (2009年8月1日)(3D)

プリンセスと魔法のキス (2010年3月6日)(2D)

塔の上のラプンツェル (2011年3月12日)(3D)

くまのプーさん (2011年9月3日)(2D)

シュガー・ラッシュ (2013年3月23日)(3D)

アナと雪の女王 (2014年3月14日)(3D)


2011年の”くまのプーさん”以降は手描きによる長編アニメーション作品は作られていません。

この中でも”ブラザー・ベア”は動物の動きが実にリアルで、歴代のディズニー作品の中でもトップクラスのクオリティです。まさに”バンビ”の正統進化というべき、リアリティのあるアクションとダイナミックなカメラワークを体現しています。


作画だけではなく、背景美術も素晴らしいの一言。

背景スタイリストとして参加しているシアンユアン・ジエが空気感や光を捉えるのが本当に上手い。



主人公が愛を知る物語

メインストーリーはグレイト・スピリッツの力によって熊に変身してしまった主人公・キナイと母熊とはぐれた子熊・コーダのロードムービー的な話ですが、”きつねと猟犬(1981年)”のように立場の違う者同士の宿命が描かれた作品です。

ディズニーといえば、これまでも恋愛や家族愛を描いてきましたが、本作はもっと広く、博愛を描いた物語です。


キナイは、動物を害獣や狩りの対象として見ていましたが、動物の立場に立ってみると人間は実に恐ろしいモンスターに見えてます。

なぜなら、動物の世界はみんな言葉が通じるのに、人間だけが言葉が通じないのです。人間は万物の霊長だと思って、他の動物を軽んじていましたが、実際は人間だけが自然界(グレイト・スピリッツ)から仲間外れにされていたということがわかってきます。


本作はマンモスが生きていた約1万年前を舞台にしています。実は北米南米に生息していた大型種の一部(マンモスやサーベルタイガーなど)が絶滅した原因として人類による狩猟が原因であるとする説もあります。これは人類がアラスカを経由して北米大陸に渡ってきた時期と一致しているからです。


グレイト・スピリッツの一部となることで、眼が開かれることがわかる演出が、大胆にもそのまま画面に表されています。

物語の第一幕、冒頭から約30分間、キナイが人間のパートでは画面の左右が切り落とされています。また、画面の上部に暗い影が入っており、背景も彩度の低いくすんだ色合いになっています。

それが、熊に変身して眼を醒ました瞬間から一気に画面が鮮やかになります。

初見時は、なぜこんなに画面が狭いのかと疑問に思うでしょうが、安心してください。これも演出です。


イヌイット文化へ敬意

イヌイットは北アメリカの北極および亜寒帯地域に伝統的に居住する先住民族です。

かつては”エスキモー”とも呼ばれていましたが、この呼び方は”インディアン”と同じく侮蔑的な言葉として現在では使われていません。

森永乳業のアイスクリームブランドの”エスキモー”も2010年に廃止されていますね。


イヌイットの中には、オーロラを覗くと来世で踊る家族や友人の姿を見つけられるという話があります。 しかし、一部のイヌイットは、光はもっと不吉で、光に向かって口笛を吹くと光が降りてきて首を切り落とされるという話も信じていました。


イヌイットはアニミズムの原理に基づいたシャーマニズムを実践していました。彼らは、全ての人に固有の守護霊のようなものがあり、それが超自然的な力を授けてくれると信じていました。そして、その依代となるのがトーテムで、本作においても重要なアイテムとして登場します。


イヌイットのコミュニティのアンガクク(シャーマン、メディスンマン)はリーダーではなく、傷の手当てをしたりアドバイスをしたり、人々の生活を助けるために霊を呼び起こしたりする一種のヒーラーや心理療法士でした。

彼らの役割は、目に見えないものを見て、解釈し、助言をすることでした。アンガククは特別な訓練を受けてなるものではなく、彼らは生まれながらに能力を持っており、成人に近づくにつれて自然にコミュニティによって認められていくものです。


イヌイットの狩人は”動物を含むすべてのものには人間と同じような魂がある”と信じていました。そして、獲物に敬意と感謝を示さなかった狩猟は、解放された魂に復讐の大義を与えると考えていました。


極寒の地での生活は常に死と隣り合わせであり、時としてコミュニティ全滅の可能性もあるという懸念を持って暮らしていました。

グレイト・スピリッツを怒らせることは、すでに極限状態にある生活にさらなる危険をもたらすことを意味しました。イヌイットは、生活必需品を得るためには超自然的な力と調和して生きなければならないことを理解していました。


有史以前の神話にインスピレーションを受けて作られた”ブラザー・ベア”はイヌイットの文化に対する敬意とエンターテインメントに満ちた素晴らしい作品です。人類がまだ自然と繋がっていた時代に思いを馳せてぜひ御覧ください。


作品概要

ブラザー・ベア
Brother Bear
監督アーロン・ブレイズ
ボブ・ウォーカー英語版
脚本タブ・マーフィー
ローン・キャメロン/デヴィッド・ホーゼルトン
スティーヴ・ベンチッチ/ロン・J.フリードマン
製作チャック・ウィリアムス
音楽マーク・マンシーナ
フィル・コリンズ
主題歌Look Through My Eyes/フィル・コリンズ
編集ティム・マーテンス
製作会社ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
ウォルト・ディズニー・フィーチャー・アニメーション
配給ブエナ・ビスタ・ピクチャーズ
公開アメリカ合衆国の旗 2003年10月20日(ニューヨークプレミア)
アメリカ合衆国の旗 2003年11月1日
日本の旗 2004年3月13日
上映時間85分
製作国アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語英語
製作費$128 million[1]
興行収入$250,397,798[1]
日本の旗 16.0億円[2]
次作ブラザー・ベア2

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